断熱性能と健康

施工者から漠然と「暖かくなるので風邪にかかりにくいようだ。」の発言はいぜんからありましたが、この5年ほど前から断熱性能と健康になんらかの因果関係があるのではないかと研究者から発表されるようになりました。私も、ちょうど5年前に近畿大学岩前教授から初めてお話を伺いました。その概要は以下のようなお話の内容でした。

 

ヒートショック

月別の死亡者数とその原因を調べた結果、死亡率は一年でもっとも12月~3月までの冬の時期に高くなることがわかりました。この季節間の変動は明らかで、死亡原因が循環器系、呼吸器系、神経系、血管系による数にも同じ傾向にあり、温度と死因には因果関係があることは明らかだという内容でした。

 

ヒートショックの月別データ

出典:死亡者数は国民生活センター消費者被害注意情報「冬の夜中は注意!高齢者の入浴突然死が増えている」より(東京、大阪、兵庫の事故データ/1993~97年)
月別平均気温は気象庁データ1971年から2000年までの東京と大阪の平均気温

 

その中でも特筆すべきことは、家庭内で、「溺死」、「転倒」、「窒息」で亡くなる人の割合が、非常に高くなるということです。家庭内での「溺死」とはバスタブでの死亡しかなく、そのほとんどは、浴槽内と洗い場の温度の違いによるものであろうと推測できます。温度差は家庭内にいたるところにあり、暖房が効いたリビングとトイレではその差が15度になることもあります。また布団の中と室温の差は20度にもなることがあります。

 

ヒートショック イメージ図

 

このような急激な温度変化に体はついていくことは難しく、心拍数が瞬時に上昇し脳血管発作「脳卒中」を引き起こしかねません。おそらくバスタブの溺死も同様であろうと考えられます。

 

死亡事故数とヒートショック数の比較

 

断熱の仕事は温度差をなくすことである

寒くなれば布団を重ねて厚くするように、衣服でいえば重ね着をするように、断熱材という綿で家をくるんであげれば、家の中の温度は暖房や家庭内で発生する熱で自然と室温は上がるはず。そうすれば家の中の扉も解放し、温度差もなくすることができる。それができれば、ヒートショックのような温度が原因で亡くなる人の数は激減するはずです。

 

その他、暖房には「暖房」と「採暖」があることなどを教えていただきました。着想が素晴らしい研究者であり、いつも刺激を与えてくださる方のお一人です

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