人の体温は概ね37度であり、この温度を保つために人の体はできています。熱は必ず温度が高いほうから冷たいほうへ移動し、この移動量が多いい時、人は寒いと感じます。そして時間当たりの奪われる熱移動量の数字が大きいほどより寒く感じます。肌の表面温度よりも、肌がふれているものが(たとえば空気、氷を手にする)、体温である36度よりも低ければ熱が奪われます。2つのものが触れて熱が移動すること「熱伝導」といいます。

熱の移動は「伝導」だけでなく、触れるものが何もない状態で、物質そのものが熱を発している「放射」による熱移動。放射による熱によって周りの空気や水などの流動体をかき回しながら流動体を熱する「対流」による熱移動があります。

 

木と鉄はどっちが冷たい?

質問1:

冬の公園に木製のベンチと鉄製のベンチがあります。どちらに腰掛けますか?

 

だれもが木製のベンチとお答えになると思います。

 

質問2:

では、座る前、木製のベンチの表面温度と、鉄製のベンチの表面温度はどちらが低いでしょうか?

 

間違える人が多いのではないかと思います。それは鉄製のベンチに腰かけると冷たく感じることを経験上知っているからです。でも落ち着いて考えると簡単ですね。触れているのは空気しかありませんから、答えは同じ温度です。では、なぜ鉄製のベンチは冷たいと感じるのでしょうか。

それは、鉄が体温から熱を奪う力が大きいからです。この性能を「熱伝導率」と呼んでいます。熱伝導率は鉄のほうが木よりも高いからです。

 

質問3:

では、腰かけるためにベンチに手をかけたその瞬間に指先は何度と感じるのでしょうか。体温は36度。外気つまりベンチの表面温度は10度とします。(指先の面積は考えない事。素手であることとします。)

 

温度を試算する

温度は以下の式から求めることができます。

 

表面温度=(物質A温度×物質A熱伝導率+物質B温度×B熱伝導率)÷(物質Aの熱伝導率+物質Bの熱伝導率)

 

実際に温度を計算してみます。

・皮膚の熱伝導率は0.21W/mK

・鉄の伝導率=49W/mK

・木板の伝導率0.11W/mk

以上とします。

 

○鉄に触れたその瞬間

 (指温度36℃×指伝導率0.21W/mK+鉄温度10℃×49W/mK)÷(0.21W/mK+49W/mK)=10.11℃

○木に触れたその瞬間

 (指温度36℃×指伝導率0.21W/mK+木温度10℃×0.11W/mK)÷(0.21 W/mK +0.11 W/mK)=27.06℃

 

実に17℃も違う結果が出てきました。これでは鉄が冷たいと感じるはずですね。

 

いったいどれだけの熱が奪われるのか?

では、今度はどのぐらいの熱量が奪われているのかを計算してみます。

熱の移動量(熱流束)は以下の式から求めることができます。

 

熱流束(熱移動量)=―熱伝導率λ×温度差÷距離

 

上の式からどのくらいの熱移動が生じるかを計算してみます。

○鉄板の熱流束=-熱伝導率49W/mK×(体温36℃‐表面温度10.1℃)=-1,269W

○木板の熱流束=-熱伝導率0.21W/mK×(体温36℃‐表面温度27.06℃)÷0.001m=-1.9W

1,269,100/5,439=668倍にもなる差となりました。

 

鉄は木に比べて指先から668倍もの熱の移動が起こっている=指先から体温を奪っているのです。鉄製のベンチに座りたくないですよね。

 

このページでお伝えしたかったことは以下です。

 

・「寒い」ということは体温が奪われている状態です。

・その熱量(や温度)は数字にすることができます。

・数字にできるということは色々なものを横並びにして評価し結果を予測することができます。

 

私たちはこのような考え方に沿って断熱リフォームの計画をしています。

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