省エネリフォームとして考えてみる

下のグラフは、一年間で消費される暖房のエネルギーを断熱材ゼロ住宅と断熱を施した現省エネ基準H11年基準の住宅で比較したモノです。この実験は常に18度を保つようになっています。グラフをみると、現行の省エネ基準レベルの断熱性能を持つ住宅は、どの地域でも、昭和55年基準とくべて消費エネルギーは半分ですむことがわかります。

 


計算条件:130m2の戸建住宅を外気温18℃より下がった日に18℃まで毎日8時間(札幌12時間)全室暖房するのに要する灯油消費量(単位: リットル/年・戸)(住宅金融公庫「SAVE ENERGY」より。)

 

しかし、このデーターは住宅全体を暖める全館暖房での運転であり、北海道などの寒冷地やヨーロッパ・北米の住宅では全館暖房は一般的ですが、ここ東京では全館暖房の住宅は珍しく、使っていないお部屋は冷暖房を入れずに、使用しているお部屋、しかもそのお部屋で何らかの作業やくつろいでいる時にしか冷暖房を使わない個別暖房(部分間欠暖冷房)が一般的です。

 

下のグラフは断熱材レベル4段階に分けて、年間で必要となる冷暖房費を比べたものです。(出典:自立循環型住宅への設計ガイドラインより)なお、この4段階とは省エネ基準と連動しており、レベル0は昭和55年基準(断熱材が薄い=たとえると肌着レベル)。レベル1は平成4年基準(たとえると厚手の長袖シャツレベル)。レベル2は平成4年基準強化(たとえるとセーターレベル)。レベル3は平成11年基準=現行基準=住宅エコポイント基準(たとえるとジャンパーレベル)。レベル4は断熱強化(たとえると厚手コートレベル)です

出典:自立循環型住宅の設計ガイドライン99頁 IBEC

 

断熱=住宅の厚着の度合い

部分間欠空調運転削減できた割合

連続空調運転削減できた割合

レベル0
(昭和55年基準)
Q値5.2W/m2K

基準

基準

レベル1
(平成4年基準)
Q値4.2W/m2K

20%程度

40%程度

レベル2
(平成4年基準強化)
Q値3.3W/m2K

35%程度

50%程度

レベル3
(平成11年基準)=現省エネ基準
Q値2.7 W/m2K

45%程度

50%程度

レベル4
(平成11年基準強化)
Q値2.1W/m2K

55%程度

70%程度

 

同じモデル住宅でホテルや北海道の住宅のように全館冷暖房システムを採用した場合は下のような結果になります。

 

全館連続空調_エネルギー代のグラフ

出典:自立循環型住宅の設計ガイドライン99頁 IBEC

 

全館空調を計画する場合必要となる断熱レベルとは

築15年程度経過した住宅(平成4年断熱基準)にお住まいで部分間欠運転(必要な時にだけ運転)で暮らしていた人が、全館冷暖房システム(セントラルシステム)を計画した場合、レベル4(平成11年省エネ基準断熱強化)程度まで断熱性能を上げなければ冷暖房費=省エネはできないということがわかります。

 

出典:自立循環型住宅の設計ガイドライン99頁 IBEC

 

さらに細かく見ると、冷房の消費エネルギー量が増えています。しかし、窓は閉め切りとしていますので、窓を開けることで過ごせる季節もありますでしょうから、窓を開放する。窓にすだれやよしずをかけるなどの工夫をすることで、冷房で消費されるエネルギーは減らすことができます。

いずれにせよ、冷房による消費エネルギーが多くなるにしても、全館空調方式は廊下も脱衣室も暖房するわけですから、温度差が原因で起こる脳卒中などのヒートショックのリスクは減りますから、決して悪い選択ではありません。(最大の違いは冬の時期の「暖かさの質」=快適性なのですがここではあえて触れません。)

 

冬は全館暖房。夏は必要な時だけ冷房方式

ヒートショックの観点から冬はすべてのお部屋は連続暖房するとして、築15年程度経過した住宅(平成4年断熱基準)レベルまでに消費エネルギー(冷暖房費)を抑えるのであれば、、夏の暑いときは必要なときだけ冷房を運転するくらし方を想定した場合、レベル4(平成11年省エネ基準強化)まで断熱性能を上げれば必要とする必要があることがわかります。

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